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”第一テサロニケ人への手紙の学び”
背景
テサロニケ人への手紙は、手紙の冒頭に「パウロとシルワノとテモテから、父なる神と主イエス・キリストとにあるテサロニケ人たちの教会へ。」と述べられているように、使徒パウロが、パウロと共に伝道に携わったシルワノ(またはシラス)、とテモテによって、福音と主の再臨を信じたテサロニケの人々へ宛てて書かれています。
パウロは第一次伝道旅行からアンテオケに帰還し、その後、エルサレム教会のシラスと共に第二次伝道旅行に出かけ、デルベ、リストラの地方を訪れ、リストラで出会った若い青年テモテを弟子として当初当時のアジア地方(現在のアナトリア半島、トルコの地域)フルギヤ・ガラテヤ地方(北ガラテヤ地方)をとおって、ムシヤのあたりでの伝道を試みました。
しかし、一行は、アジヤで御言を語ることを聖霊に禁じられたので、ムシヤを通過して、トロアスに下って行きました。ここで夜、パウロは。ひとりのマケドニヤ人が立って、「マケドニヤに渡ってきて、わたしたちを助けて下さい」と、彼に懇願する一つの幻を見、パウロはこの幻は神がマケドニア地方、(現在のヨーロッパ、ギリシア地方)に福音を伝えるために一行を招かれているのだと確信しました。
このとき、パウロは、おそらく、後にルカの福音書、使徒書の作者となったルカと出会い、一行は、トロアスから船出して、サモトラケに直航し、翌日ネアポリスに着き、ここで、アケドニア地方でのローマ帝国第一の植民都市であるピリピで福音伝道がはじまりました。
ピリピの地ではじめられたこの伝道の様子は、使徒書16章に記録され、ピリピ人への手紙の背景でもこのときの様子を解説しています。(ピリピ人への手紙の学び参照)
ピリピの地で伝えられた福音をより根付かせるために、多分ルカとテモテを助手として伝道の旅を続け、テサロニケでパウロは、三つの安息日にわたり、ユダヤ人の会堂で聖書に基いて彼らと論じ、キリストが苦難を受け、三日目に死人の中からよみがえり、再び来られることについて説明もし、論証しました。
しかし、ユダヤ人たちは、それをねたんで、町をぶらついているならず者らを集めて暴動を起し、パウロとシラスを襲おうとしたためにパウロの一行はこの二人を夜の間に街からベレヤへと送り出し 、二人は、マケドニア地方で神の言葉を教え続け、海辺伝いにアテネまでの旅を続けました。このときおそらく、途中からテサロニケへ戻ったシラスを残し、パウロはアテネを通り、コリントの地で紀元50年から紀元52年頃まで一年半この地に滞在しました。
この間、パウロは、テサロニケに於いて短い期間に伝えられた福音とキリストにある希望を受け入れた人々のためにテサロニケに戻ったシラスとテモテ、ルカたちからの報告を待ちながら、コリントの地でユダヤ人退去命令によってイタリアから来たアクラとプリスキラ夫婦と出会い、彼らの家に住み込んで共に仕事をし、イエスがキリストであることを力強くユダヤ人たちに証しし、さらにパウロをねたみ、反抗するユダヤ人から離れ、ユダヤ人の会堂と隣り合わせにあったテテオ・ユストという神を敬う人の家でコリントの地の多くの異邦人たちに福音を伝え続けました。(使徒書17章、18章、第一コリント人への手紙背景と概要参照)
テサロニケの人々に宛てて書かれた手紙は、パウロがコリントの地に滞在し、神のことばと福音の伝道を続けている期間にテサロニケの地に残したシラス、テモテ、ルカたちと合流した後、彼らの報告によってテサロニケの人々にキリストにある信仰と希望が根付いていることを聞いて、彼らの疑問、とくにキリストの再臨について答えるために、コリントの地から紀元51年から52年の初頭頃に書かれたとされています。
このテサロニケの人々に宛てて書かれた手紙は、新約聖書に記載されているパウロの書簡のなかでも最も初期に記された書簡の一つとされています。(ガラテヤ人への手紙が、当時のローマ帝国における北方ゴール地域(北ガリラヤ地方)ではなく、パウロの第一次伝道旅行からの帰還直後に南ガラテヤ地方の人々に宛てて書かれたとすれば、ガラテヤ書は紀元48年後半、49年頃に執筆されたと考えられ、テサロニケ人への手紙は、その後に執筆され、新約聖書におけるパウロの書簡のなかでは二番目に執筆された書簡と考えられます。)
使徒書のなかにも記載されているように、パウロのテサロニケでの滞在期間は、せいぜい一カ月という短期間であったにも拘わらず、テサロニケの人々にキリストの復活と再臨について、キリストの再臨の希望が根付いているというテモテからの報告を受けて、パウロはコリントの地へ着いた直後にこの手紙を書いたとされています。
テサロニケの人々に宛ててこの手紙が書かれた目的は幾つか挙げられますが、第一番目に彼らの信仰の働き、愛の労苦と、主イエス・キリストに対する望みの忍耐が成長していることへの感謝と彼らへの励ましを与えること、第二に、キリストの福音に反対する人々、とくに、伝統的なユダヤ主義に固執するユダヤ人たちへの反論と説明を与え、迫害のなかでも信仰に堅く立つことの重要さを伝えるため、第三に、キリストの再臨について、再臨がすぐにも起ることを期待した人々のなかに眠ってしまった人々が出現するようになったために、キリストの再臨について正しい理解を与えるため、すなわち、キリストの再臨について望みの忍耐が決して裏切られることのない神の約束であり、そのことについてテサロニケの人々に正しい理解を与え励ますため、第四にキリストの福音を信じる人々がどのように信仰生活を歩むべきかについての理解を与えるために書かれています。
従って、テサロニケの人々に宛てて書かれたこの手紙は、福音の信仰、キリストによる神の愛、再臨のキリストにある栄光の希望、特にキリストの再臨について、キリストが地上に再臨される前にこれからいつにでも起こる信仰者が引きあげられる確実な希望ということが主要なテーマとなっています。
概要
I. 前置きと挨拶 (1:1)
II. パウロとテサロニケの信者との絆 (1:2-3:13)
1) テサロニケの信者の信仰の働き、愛の労苦、イエス・キリストに対する望みの忍耐とを思い起こし、神へ感謝( 1:2-10)
2)使徒として人間に喜ばれるためではなく、神に喜ばれるように、福音を語る。 (2:1-16)
3)テサロニケの信徒たちへの訪問の願い (2:17–3:10)
4)テサロニケの信徒にたいするパウロの祝福の祈り (3:11-13)
III. 主イエス・キリストの来臨を励みとして聖化される(4:1–5:24)
1)愛の労苦にある他のクリスチャンとの歩み (4:1-12)
2) 差し迫っている主の来臨 (4:13–5:11)
- 携挙と栄光の復活 (4:13-18)
- 神の怒りからの解放 (5:1-11)
3)善を追い求め、いつも喜び、絶えず主に祈りなさい (5:12-22) - 主にあって信仰の指導をする者を重んじる勧め (5:12-13)
- 怠惰な者を戒め、小心な者を励まし、弱い者を助け、すべての人に対して寛容でありなさい(5:14-15)
- すべての事について、感謝し、御霊を消してはいけない。(5:16-18)
- 預言を軽んじてはならない。すべてのものを識別して、良いものを守りなさい。 (5:19-22)
IV. 結びのことば (5:23-28)
1)祝福の祈り (5:23-24)
2) 結びの挨拶 (5:25-28)
鍵となる聖句
1Th 1:3 あなたがたの信仰の働きと、愛の労苦と、わたしたちの主イエス・キリストに対する望みの忍耐とを、わたしたちの父なる神のみまえに、絶えず思い起している。
1Th 1:10 そして、死人の中からよみがえった神の御子、すなわち、わたしたちをきたるべき怒りから救い出して下さるイエスが、天から下ってこられるのを待つようになったかを、彼ら自身が言いひろめているのである。
あなたがたも知っているとおり、父がその子に対してするように、あなたがたのひとりびとりに対して、
1Th 2:12 御国とその栄光とに召して下さった神のみこころにかなって歩くようにと、勧め、励まし、また、さとしたのである。
1Th 2:13 これらのことを考えて、わたしたちがまた絶えず神に感謝しているのは、あなたがたがわたしたちの説いた神の言を聞いた時に、それを人間の言葉としてではなく、神の言として――事実そのとおりであるが――受けいれてくれたことである。そして、この神の言は、信じるあなたがたのうちに働いているのである。
1Th 2:19 実際、わたしたちの主イエスの来臨にあたって、わたしたちの望みと喜びと誇の冠となるべき者は、あなたがたを外にして、だれがあるだろうか。
1Th 3:13 そして、どうか、わたしたちの主イエスが、そのすべての聖なる者と共にこられる時、神のみまえに、あなたがたの心を強め、清く、責められるところのない者にして下さるように。
1Th 4:13 兄弟たちよ。眠っている人々については、無知でいてもらいたくない。望みを持たない外の人々のように、あなたがたが悲しむことのないためである。
1Th 4:14 わたしたちが信じているように、イエスが死んで復活されたからには、同様に神はイエスにあって眠っている人々をも、イエスと一緒に導き出して下さるであろう。
1Th 4:15 わたしたちは主の言葉によって言うが、生きながらえて主の来臨の時まで残るわたしたちが、眠った人々より先になることは、決してないであろう。
1Th 4:16 すなわち、主ご自身が天使のかしらの声と神のラッパの鳴り響くうちに、合図の声で、天から下ってこられる。その時、キリストにあって死んだ人々が、まず最初によみがえり、
1Th 4:17 それから生き残っているわたしたちが、彼らと共に雲に包まれて引き上げられ、空中で主に会い、こうして、いつも主と共にいるであろう。
1Th 4:18 だから、あなたがたは、これらの言葉をもって互に慰め合いなさい。
1Th 5:1 兄弟たちよ。その時期と場合とについては、書きおくる必要はない。
1Th 5:2 あなたがた自身がよく知っているとおり、主の日は盗人が夜くるように来る。
1Th 5:3 人々が平和だ無事だと言っているその矢先に、ちょうど妊婦に産みの苦しみが臨むように、突如として滅びが彼らをおそって来る。そして、それからのがれることは決してできない。
1Th 5:4 しかし兄弟たちよ。あなたがたは暗やみの中にいないのだから、その日が、盗人のようにあなたがたを不意に襲うことはないであろう。
1Th 5:9 神は、わたしたちを怒りにあわせるように定められたのではなく、わたしたちの主イエス・キリストによって救を得るように定められたのである。
1Th 5:10 キリストがわたしたちのために死なれたのは、さめていても眠っていても、わたしたちが主と共に生きるためである。
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