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旧約聖書

エステル記の学び


背景

エステル記は、年代的にはペルシアのアハシュロス(クセルクセス)王の時代を背景とし、アハシュロスの没後(BC486-465頃)、紀元前450年から400年の間に記録されたと推定されます。

この時代はエズラ記とネヘミア記の時代、エルサレムに帰還したイスラエル、ユダヤの民の神殿再建工事が再開され完成した紀元前516年頃の時期と、ペルシアの王アルタクセスクセス(アルタシャスタ)の献酌官であったネヘミアがエルサレムに帰還し城壁の修復を完成させる紀元前445年頃の時期の中間の時期を時代背景としています。

エステル記が誰によって記述されたのかは、記述のなかに人物が特定されておらず、神学者の間でも意見が分かれています。

ある人々は、エズラ、ネヘミアが記述を記したと推定しますが、エステル記の文体、記述方法は、エズラ、ネヘミア記とは明らかに異なっています。

ある人々は、記述に登場するモルデカイが記録し、エステル記を記述したと推定しますが、モルデカイの名は記述の中で三人称で記され、記述のなかでモルデカイが没した後に記録されたことが記されていることから、エステル記がモルデカイであったと推定することには無理があると思われます。

エステル記の記述はあきらかにユダヤ人の観点から記録されており、当時のペルシア帝国の内部事情に詳しい記述がされていることからも、ペルシャ帝国内の、名前不詳なユダヤ人によって記述されたとする見方がもっとも妥当と思われます。

エステル記はペルシャ帝国からイスラエルに帰還しなかったユダヤ人に向けて書かれています。この記述のなかには、神、ヤーゥエという文字は一度も現われていません。

しかし、記述全体をとおして、神のご計画と目的のなかで、神が気を付けてその民を保護されておられる(providential care)ということがわかります。そして、このことは、キリストの再臨という神のご計画のなかでも、神の契約、選びの民が神の保護のもとにあることをも示唆しています。

したがって、エステル記の主要なテーマは、神の真実なご計画と、選びの民への保護(Providential Care of God)ということがテーマとなっています。


概要

I 捕囚となった地に留まったユダヤ人に対する虐殺の陰謀 (1-4)

A.異邦の王の宴席への召還に応じず、王妃罷免の詔勅が出される。 (1)     
B 王の憤りがおさまり、罷免された王妃に変わって新しい王妃の選定が行われる。  
ユダヤ人モルデカイに養育されたエステルが王妃として選ばれる。(2)
C アガグ人ハマンが王国の首相として取り立てられる。 ハマン、モルデカイとその民を憎み、王国のユダヤ人虐殺の陰謀を企て、すべてのユダヤ人を根絶やしにし、殺害し、滅ぼし、彼らの家財をかすめ奪う、王の勅令が発令される。(3)
D 王の命令とその法令が届いたどの州においても、ユダヤ人のうちに大きな悲しみと、断食と、泣き声と、嘆きとが起こり、多くの者は荒布を着て灰の上にすわった。王妃エステルは、王の宦官ハタクを呼び寄せ、モルデカイのところへ行って、その訳、何が起こっているのかを問い合わすよう命じる。
モルデカイからの王妃エステルへの依頼、このときのためにエステルが王国で王妃となっているという説得、王妃エステルの決意。(4)

II. ユダヤ人に対する偉大な解放 (5-10)

A.ハマンのモルデカイへの陰謀に対する王妃エステルの勇気(5 ) 
B.王によって、モルデカイ暗殺計画を事前に防いだ功を認められ、取り立てられる( 6 )
C.モルデカイのかわりにハマンが処刑される (7).
D.エステル、ユダヤ人を救う (8)
E.ユダヤ人、敵を滅ぼす (9)
F.ユダヤ人モルデカイ、アハシュロス王に継ぐ位に就き、モルデカイの偉大さが人々に記憶される。(10)  


鍵となる節

  • モルデカイはエステルに返事を送って言った。「あなたはすべてのユダヤ人から離れて王宮にいるから助かるだろうと考えてはならない。
    もし、あなたがこのような時に沈黙を守るなら、別の所から、助けと救いがユダヤ人のために起ころう。しかしあなたも、あなたの父の家も滅びよう。あなたがこの王国に来たのは、もしかすると、この時のためであるかもしれない。」
    エステルはモルデカイに返事を送って言った。
    「行って、シュシャンにいるユダヤ人をみな集め、私のために断食をしてください。三日三晩、食べたり飲んだりしないように。私も、私の侍女たちも、同じように断食をしましょう。たとい法令にそむいても私は王のところへまいります。私は、死ななければならないのでしたら、死にます。」 (エステル記4章13-16)


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