繁栄の秘訣(第二サムエル2章2ー4)
- 2:2 「私は世のすべての人の行く道を行こうとしている。強く、男らしくありなさい。
- 2:3 あなたの神、主の戒めを守り、モーセの律法に書かれているとおりに、主のおきてと、命令と、定めと、さとしとを守って主の道を歩まなければならない。あなたが何をしても、どこへ行っても、栄えるためである。
- 2:4 そうすれば、主は私について語られた約束を果たしてくださろう。すなわち『もし、あなたの息子たちが彼らの道を守り、心を尽くし、精神を尽くして、誠実をもってわたしの前を歩むなら、あなたには、イスラエルの王座から人が絶たれない。』」
- ダビデからソロモンへの遺言
ユダ王国の王として7年、イスラエルとユダの統一王国の王として33年間民を治め、若い時から戦いにおいて、兵を指揮し、民を治めることにおいても抜群の活躍を続け、周囲の敵を平定し、国を安定に導いたダビデ王は、年を重ね急激に衰え、老人となって、まだ年若い息子のソロモンに王位を譲り、この世を去る時を迎えました。
ダビデは死ぬ日の近づいたことを悟り、これから自分の跡を継いで王として民を治めてゆくソロモンに対し言ったのが「私は世のすべての人の行く道を行こうとしている。強く、男らしくありなさい。
あなたの神、主の戒めを守り、モーセの律法に書かれているとおりに、主のおきてと、命令と、定めと、さとしとを守って主の道を歩まなければならない。あなたが何をしても、どこへ行っても、栄えるためである。
そうすれば、主は私について語られた約束を果たしてくださろう。すなわち『もし、あなたの息子たちが彼らの道を守り、心を尽くし、精神を尽くして、誠実をもってわたしの前を歩むなら、あなたには、イスラエルの王座から人が絶たれない。』」(列王上2章2-4)
という最後の言葉でした。
- ダビデの心
ダビデは、その生涯にいろいろな過ちを犯しましたが、常に彼の心は神に対する責務と、神との生きた関係のなかで、神を忘れることがありませんでした。自分の思い、行動が本当に神に喜ばれるものかどうかということがダビデの心の中心を占めていました。この故に、ダビデがその大半を詠んだとされる詩篇を読むとき、わたしたちが神との交わりと、持つべき心のありかたを見ることができるのです。
父ダビデの跡を継いで王位に就くことに、年若いソロモンは、自分でも「わが神、主よ。今、あなたは私の父ダビデに代わって、このしもべを王とされました。しかし、私は小さい子どもで、出入りするすべを知りません。」(列王上3章7)と述べているように、おびただしい民を治め、聞き分けるという重責に圧倒されていました。
このような息子ソロモンに対し、ダビデは、「強く、男らしくありなさい。」と、励ましを与えた後で、ソロモンが何をしても、どこへ行っても栄えるための鍵となることばを述べています。
「あなたの神、主の戒めを守り、モーセの律法に書かれているとおりに、主のおきてと、命令と、定めと、さとしとを守って主の道を歩まなければならない。」ということが、ダビデがソロモンに伝えた王国が栄えるための秘訣でした。
- 主に信頼し、主の恵みに委ねる
たとえ王であっても、すべてのことが自分の意図したように、すべてが思いどうりにならないこともあるでしょう。
使途パウロは、肉体に与えられたとげを取り去ることを主に願ったとき、「主は『わたしの恵みは、あなたに十分である。というのは、わたしの力は、弱さのうちに完全に現われるからである。』と言われ、ですから、私は、キリストの力が私をおおうために、むしろ大いに喜んで私の弱さを誇りましょう。なぜなら、私が弱いときにこそ、私は強いからです。(第二コリント12章9、10)」と述べています。神のご計画されることに自分の思いを委ね、主の掟と命令と定めとさとしを守って行うとき、神の恵みが十分であることを知ることが出来ます。
- 聖書の戒め
エジプトで奴隷となった民を解放し、イスラエルの民を率いたモーセも、民が約束の地に これから入ろうとするとき、「イスラエルよ。今、あなたの神、主が、あなたに求めておられることは何か。それは、ただ、あなたの神、主を恐れ、主のすべての道に歩み、主を愛し、心を尽くし、精神を尽くしてあなたの神、主に仕え、あなたのしあわせのために、私が、きょう、あなたに命じる主の命令と主のおきてとを守ることである。(申命記10章12)」さらに、 「もし、あなたがたが、私の命じるこのすべての命令を忠実に守り行ない、あなたがたの神、主を愛して、主のすべての道に歩み、主にすがるなら、主はこれらの国々をことごとくあなたがたの前から追い払い、あなたがたは、自分たちよりも大きくて強い国々を占領することができる。(申命記11章22、23)」そして、「 私が、きょう、あなたに、あなたの神、主を愛し、主の道に歩み、主の命令とおきてと定めとを守るように命じるからである。確かに、あなたは生きて、その数はふえる。あなたの神、主は、あなたが、はいって行って、所有しようとしている地で、あなたを祝福される。(申命記30章16)」と言っています。
ヨシュアに対して主なる神が言われたのも、「 ただ強く、雄々しくあって、わたしのしもべモーセがあなたに命じたすべての律法を守り行なえ。これを離れて右にも左にもそれてはならない。それは、あなたが行く所ではどこででも、あなたが栄えるためである。(ヨシュア記1章7)」ということばでした。ヨシュアも約束の地をイスラエルの民が占領したとき、「 ただ主のしもべモーセが、あなたがたに命じた命令と律法をよく守り行ない、あなたがたの神、主を愛し、そのすべての道に歩み、その命令を守って、主にすがり、心を尽くし、精神を尽くして、主に仕えなさい。(ヨシュア記22章5)」と、言っています。
- 戒めと律法全体のまとめ
主の命じられたイスラエルの民にたいする命令とおきて、戒めと律法は、出エジプト記、レビ記、申命記を読むとき、よりその詳細を知ることができますが、新約聖書のなかでイエスご自身が、
「『心を尽くし、思いを尽くし、知力を尽くして、あなたの神である主を愛せよ。』
これがたいせつな第一の戒めです。
『あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ。』という第二の戒めも、それと同じようにたいせつです。 律法全体と預言者とが、この二つの戒めにかかっているのです。(マタイ福音書22章37-40)」と言われているように、この基本的な戒めのなかに、主の命令と掟と戒めのすべてがまとめられています。
- 王国の繁栄
ソロモンが、ダビデの死に際に残したことばを守り、神の心に適って王国を治めているあいだは、王国はその言葉のとおり、イスラエルの民が経験したことのない栄華と繁栄を享受しました。このときの王国の繁栄と栄華をみるとき、神が約束されている御国の繁栄と栄華を、わたしたちも伺い知ることができます。
繁栄することと、神の律法、掟、戒めを守り行うことには直接の関係があります。
神は、ソロモンが神殿を建設しているときに、「あなたが建てているこの神殿については、もし、あなたがわたしのおきてに歩み、わたしの定めを行ない、わたしのすべての命令を守り、これによって歩むなら、わたしがあなたの父ダビデにあなたについて約束したことを成就しよう。 わたしはイスラエルの子らのただ中に住み、わたしの民イスラエルを捨てることはしない。(列王上6章12、13)」と、約束されました。
ここで注意する必要があるのは、神がソロモンに、もし全き心を持って正しく神の前を歩み、すべて命じたように行って定めと掟を守るなら、神はイスラエルのただ中に住み、イスラエルを捨てることはない、という条件つきの約束となっていることです。
- 栄える者と滅びにいたる者
ダビデは、栄える者と滅びる者について、詩篇のなかで次のように詠っています。
「幸いなことよ。悪者のはかりごとに歩まず、罪人の道に立たず、あざける者の座に着かなかった、その人。
まことに、その人は主のおしえを喜びとし、昼も夜もそのおしえを口ずさむ。
その人は、水路のそばに植わった木のようだ。時が来ると実がなり、その葉は枯れない。その人は、何をしても栄える。
悪者は、それとは違い、まさしく、風が吹き飛ばすもみがらのようだ。
それゆえ、悪者は、さばきの中に立ちおおせず、罪人は、正しい者のつどいに立てない。
まことに、主は、正しい者の道を知っておられる。しかし、悪者の道は滅びうせる。(詩篇1章1-6)」
- ソロモンの繁栄と衰退
神がソロモンに夢のなかにあらわれ、仰せられて「あなたに何を与えようか。願え。」と言われたとき、ソロモンは、自分のために長寿を求めず、自分のために富を求めず、敵のいのちをも求めず、むしろ、自分のために正しい訴えを聞き分ける判断力を求め 、知恵の心と判断する心とを求めました。このために、神は、ソロモンが願わなかった、富と誉れをもソロモンに与え、ソロモンの生きているかぎり、王たちの中で並ぶ者のない栄華をあたえられました。
しかし、ソロモンはエジプトの王パロと互いに縁を結び、パロの娘をめとり、ダビデの町に連れてきて王妃としました。この後、多くの外国の女たちを愛し、神が言われた「 王は、自分のために決して馬を多くふやしてはならない。馬をふやすためだといって民をエジプトに帰らせてはならない。『二度とこの道を帰ってはならない。』と主はあなたがたに言われた。
多くの妻を持ってはならない。心をそらせてはならない。自分のために金銀を非常に多くふやしてはならない。(申命記17章16、17)」という王にたいする主の戒めに背き、「あなたがたは彼らの中にはいって行ってはならない。彼らをもあなたがたの中に入れてはならない。さもないと、彼らは必ずあなたがたの心を転じて彼らの神々に従わせる。」と主が言われた女たちを妻妾として王の後宮に迎え、年をとったとき、その妻たちが彼の心をほかの神々のほうへ向けたので、彼の心は、父ダビデの心とは違って、彼の神、主と全く一つにはなりませんでした。
こうしてソロモンは、主の目の前に悪を行ない、父ダビデのようには、主に従い通さなかった(列王上11章4、6)ために、神は王国をソロモンから引き裂いて、イスラエルは二つの王国に分裂してゆくことになりました。
- 繁栄の秘訣
後に、ユダ王国のウジヤ王も、神を認めることを教えた預言者ゼカリヤの存命中は、神を求め、彼が神を求めていた間、神はウジヤ王のときに王国を栄えさせました。(歴代誌下26章5)
神を愛し、神の戒めと律法を守り、堅く立って歩むとき、その結果として繁栄がもたらされます。
長老ヨハネも、ガイオに手紙を送り、「 愛する者よ。あなたが、たましいに幸いを得ているようにすべての点でも幸いを得、また健康であるように祈ります。(第三ヨハネの手紙1章2)」とガイオの繁栄を祈っています。
主を愛し、心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くして主のことばを守り、主との生きた関係のなかで人生を歩むとき、主からの祝福と繁栄を受けるものとなります。
「神の国とその義とをまず第一に求めなさい。そうすれば、それに加えて、これらのものはすべて与えられます。(マタイ福音書6章33)」という言葉は、変わらない真理です。
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